宮城峡蒸溜所見学(前編)の続きとなります。今回からようやく宮城峡蒸溜所に潜入していきます。

  • 宮城峡蒸溜所
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 作並温泉を後にし、10時頃到着。朝一で宮城峡蒸溜所にやってきました。予約して約70分ガイド付き見学コースにしました。
 余市蒸溜所よりも更に山奥にあるので自然の景色がすごいですね。敷地内の湖にはなんと白鳥も飛んでいました。

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↑宮城峡蒸溜所のメインストリート。とにかく広いし建物も巨大。赤いレンガ造りで統一されています。

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 奥にいる白い影が白鳥です。くっ、、、飛んでいるところを撮りたかったです。

  • 見学開始
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 まずビジターセンターが見えます。こちらで見学の受付も行います。余市蒸溜所でいうところのニッカミュージアムみたいな感じです。様々な設備やウイスキーについての詳細を見ることができます。

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 施設内はとても綺麗で新しい感じがします。

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 このように液色を比較したり、グラスに注がれた実際のウイスキーから香りを楽しむこともできます。これはウレシイタノシイ。

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 カフェジンウォッカもこのように香りを楽しんだり、ボタニカルごとに嗅ぎ分けたりできます。

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 樽の大きさやチャー(樽の内側を焼き焦がす工程)による変化などを見て、触って学ぶこともできます。こう言うのは宮城峡蒸溜所ならではの楽しみでしょう。

 色々見て楽しんでいると見学が始まりました。最初はシアタールームで竹鶴政孝の物語と宮城峡蒸溜所についての説明動画を10分ほど観ます。

 ここで宮城峡蒸溜所の基本情報をサラッと。
 宮城峡蒸溜所(ニッカウヰスキー株式会社仙台工場とも)は、宮城県仙台市青葉区ニッカ1番地にあります。この住所はニッカの宮城県進出を記念して特別に知事から贈られた名前です。
 1969年から稼働を開始しました。余市蒸溜所とは方向性の違う原酒作りを目的にしているため環境も作り方も余市と宮城峡は違います。余市はスコットランドでいうところのハイランド地方で、宮城峡はローランド地方だなどと例えて表現されることもあります。
 建設場所をこの宮城にした理由ですが、新天地を求め各地を巡っていた竹鶴氏一行は、この地にある新川に辿り着き、この川の水でブラックニッカの水割りを作り飲んだところ感激してここに建てるぞ!となったそうです。

 宮城峡蒸溜所には1999年にカフェ式連続式蒸留機が移設されました。このカフェ式蒸留器は旧式で構造が複雑であるため生産には非効率なものですが、香味が残りやすく竹鶴氏お気に入りの設備なのです。今でもモルトやグレーンウイスキーの他にジンやウォッカもこの蒸留器で製造されています。
 また、樽の製造工場もあり、最近は巨大な貯蔵庫も完成しました。余市には昔からある施設などが多くありましたが、宮城峡は近代的で大規模な設備が多く見られました。

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↑左が余市蒸溜所、右が宮城峡蒸溜所の写真です。建物のつくりもまた違いますね。
 紹介VTRを見終えたら早速ガイドさんについていきながら格施設を巡ります。

  • 乾燥棟と蒸溜棟(カフェ式)
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 写真右の建物がカフェ式連続式蒸溜器のある蒸溜棟です。ここでニッカお馴染みのカフェグレーン、モルトウイスキーの他にジンなどがつくられています。奥の方はいかにも工場な様子と音が伺えます。
 写真左側にあるのは乾燥棟(キルン棟)です。こちらも見学不可ですが、やはりその建物の大きさには驚きました。昔はピートを焚いて大麦麦芽を乾燥させていましたが、現在この建物は使用されておらず輸入したものをメインに使用しています。パゴダ屋根と呼ばれる独特な形のこの建物、現在では宮城峡蒸溜所のシンボル的な存在です。


  • 仕込み棟
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 写真に収まりきらず変な感じになりました。写真右の白い建物が穀物貯蔵庫です。左が仕込み棟で、今回は仕込み棟の内部を見学することができました。
 仕込み棟では蒸留する前の液体、所謂「もろみ」を作る場所です。原料の大麦麦芽をお湯につけ発酵させます。この工程でデンプンへと変化します。ここで出来上がった大麦麦芽の発酵液を麦汁と呼びます。
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 この麦汁に特性の酵母を加えてアルコール炭酸ガスに分解します。この酵母はパンやビール用の他に輸入物や自然発生したモノ、ニッカ独自に開発したモノなど多様であり、この酵母の力もまたお酒の味わいに大きく影響します。この前ご紹介した宮城峡アロマティックイーストのお話に繋がるわけです。ここでアルコール度数7度前後のホップ抜きビールみたいな液体ができあがります。それをもろみと言います。
 奥に進むと管理室のような場所がありましました。ここは撮影が不可ですのでお写真は載せられませんがコンピューターやモニターがズラリのハイテク感ある一室でした。鉄道や救急の通信司令室みたいなイメージです。モニターの一つにはリアルタイムで水を泳ぐ金魚が映っていました。これは水質チェックのため、仕込み水に異常がないかを金魚が身体を張って確かめてくれています。今まで水質の異常が原因で宮城峡蒸溜所の金魚が亡くなったことはないそうですよ。

  • 蒸溜棟
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 この単式蒸留器で蒸留を行います。手前の輝いている方が初留釜、奥の茶色っぽい方が再留釜で、計2回蒸留をします。
 こちらは余市のストレート型に対して、宮城峡はバルジ型と呼ばれる膨らみのある形状をしています。この形ではより外気により多くの面積が触れることでクリアな味わいになると言われています。蒸留器の形は細かな部分に着目すると本当に蒸溜所それぞれですね。
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 (左上が宮城峡蒸溜所、右下が余市蒸溜所のポットスチルの写真です。)
 加熱方法は、余市では石炭直火蒸留を行っていますが、宮城峡ではスチームによる間接加熱の力で蒸留を行っています。

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 蒸留したての液はまだ樽の色がついていないので透明です。ニューポットニューメイクなどと呼ばれます。宮城峡ではそれらの香りを試すことができました。まだまだ香ばしいアルコールといった感じ。
  • 貯蔵庫
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 先程出来上がったニューポットをそれぞれ個性の違うに入れて熟成します。その樽を保管しているのが貯蔵庫です。見学用のため実際にこの貯蔵庫ではウイスキーの熟成は行われません。この中には照明などがありますが、他の実際に熟成が行われている貯蔵庫では照明もなくヒンヤリしています。
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 内部には樽がずらり。ここでも実際に樽を見て嗅いで触って楽しむことができます。


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 樽で熟成した期間によって液体の色はこうも違うんだということが分かりますね。


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 ちなみに見学コースの一番奥にはこのような大規模な施設がありました。これは最近できた倉庫、貯蔵庫のようで、見学はできません。


 ウイスキーの製造工程を一通り見ることができたので早速出来上がりをいただきましょうか、、、!と思ったらすごく長くなってしまったので「宮城峡蒸溜所見学(後編)」で続きをご覧ください!



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